罪と罰

次の文章は文系の、「受験 する太郎」が2023年の共通テストを受け、家で自己採点を終えた場面である。



「結果、どうだった?」
台所から母の声が聞こえる。出来は正直微妙だったから言葉に詰まる。
「まぁまぁかな」
今まで塾などに通わせてもらったことが頭をよぎり、胸が締め付けられるような感覚を覚える。
勉強はしていた。していたが、理想的な勉強とは言えなかった。勉強計画を立てなかったから基礎固めは疎かになり、苦手科目である数学の勉強を後回しにしてしまった。そのせいで秋冬までその取返しに時間がかかり、結局基礎が疎かなまま今回の共通テストを迎えてしまった。馬鹿だ僕は。
日付も変わり、夜の寒さが私の頬を差す。今日やったテストの問題用紙が床に散らばり足の踏み場はない。いつからかな、日付が変わったってなにも感じなくなったのは。そうか、あの夏休みからか。授業がなくなってからの僕は、深夜2時に寝るなんて当たり前になってしまっていた。午前中に目覚めたことなんて、ほとんどなかった。無駄な時間が多かった。今は後悔しかない。暗い部屋で、赤い目をこする。もし、あの夏休みに戻れるなら、戻れるのなら、規則正しい生活だってするし、勉強計画だってきちんと立てる。そんなことを言ったって、時間は返ってこない。取り返しのつかないことをしてしまったんだ。

胸が熱くなり思いがあふれてくる     視界がだんだんとぼやけていく    

「ピピピッ、ピピピッ」
耳障りな機械音が鼓膜を揺らす。生暖かい空気と、蝉の声ですべてを理解する。今日は8月14日だ。寝起きのせいか、夢のせいか目が腫れている。
「今日は早起きだね、怖い夢でも見たの?」
部屋を通りかかった母が僕に声をかける。その声でまた泣きそうになる。
「今から朝ご飯作るから待っててね」
「うん、ありがとう」
朝ご飯を食べるのなんていつぶりだろう。
頭もさえて、勉強もはかどりそうな気がする。朝ご飯を食べ終わったら、塾に行く準備をしよう。塾に行ったらまず、残りの夏休みをどう過ごすか計画を立てるんだ。
今日から、僕は生まれ変わる________

新しい僕に、夏の風が吹いた。




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